数学や理科の記述式解答に苦手意識を感じています。
解答に際して何に気をつければいいのか、またうまく記述できるようにするにはどのように訓練すればいいのでしょうか?
数学に限らず、記述式回答を苦手としてる生徒はたくさんいると思いますが、なかでも数学はその上位に食い込むのではないでしょうか。ただ、結局のところは「思考訓練」によっていくらでも克服することは可能です。
本記事では、記述式が採用される理由および記述式で気をつけるべきこと・訓練のしかたを紹介していきます。
1. 記述式解答で意識すべきこと
まず、本節では、記述式解答をする上で意識すべきことを紹介していきます。
採点者が読みやすい解答を意識しよう
解答を採点してくれる方も人間なので、読みやすい・分かりやすい解答を心がけましょう。
字の大きさや丁寧さもそうですが、「必要十分な量だけを書く」ことも重要です。短すぎると論理が飛躍してしまう一方、長すぎても冗長に感じられてしまいます。
文章で理論の流れを補おう
記述欄は計算メモ欄ではなく、どのようなプロセスで答えにたどり着いたかを採点者に説明する欄です。
もしも式だけで日本語の説明がない解答を書いてしまうと、採点者にとっては分かりにくい答案になってしまいます。
なので、理論の流れがわかるように適切に文章を使い、解答を構成していきましょう。
そして、何より文章を書くわけなので、主語や述語、目的語、接続詞による文章の流れなどを意識し、全体を通して意味の通る文章を心がけましょう。
式変形は最低限に留めよう
問題によっては長い式変形が必要な場合もありますが、式変形全てを回答欄に書いてしまうと、採点者にとっては冗長に感じられてしまいます。
また、解答欄が式で埋め尽くされて足りなくなってしまうという事態も起こりえます。
さらに、多くの場合、採点対象になるのは式変形の要所だけなので、冗長な式変形は解答としては余分になってしまいます。
計算は解答用紙ではなく計算用紙や余白で行い、解答に書くのは最初の式と最後の式、そして間の式変形の要点のみに留めましょう。
何の公式・定理・法則を使ったのかを正しく明示しよう
教科書に載っている公式・定理・法則は、受験者と採点者の両方が知っているものであり、いわば「共通言語」です。
なので、解答に際しても「余弦定理より、~」「運動量保存則より、~」のように、公式・定理・法則の名前を明示することで分かりやすい解答が書けます。
注意点としては、「正しい名前(教科書に載っている名前)」を用いることです。自分のオリジナルの呼び方では採点者に伝わらないので、実力を正しく評価されなくなる恐れがあります。
分からなくても足掻いた痕跡を書く
上記の注意点を最初から全て意識できるのが理想ですが、いきなり綺麗な解答をかける人は滅多にいません。
綺麗に書くことは大事ですが、たとえ汚い解答であっても、書かれている内容から採点者が受験者の意図を汲み取って採点してくれます。
したがって、「解法が全然分からない、綺麗な解答が書けない」からといって白紙で提出してしまうのは勿体無いです。少しでも考えた痕跡を残せば、いくらか評価をしてもらえる可能性があります。
2. 記述式解答を訓練する方法
次に、記述式解答を上達させるための方法を紹介します。
問題集の模範解答、学校や塾での問題演習の解答を参考にしよう
いきなり記述式解答を書こうと思っても、何が「良い解答」なのか分からないと書きようがありませんよね。
ですから、まず最初にやるべきは「他の人が作ってくれた解答」を真似することです。
市販の問題集(解説が丁寧なものが理想)や、学校・塾での問題演習で先生が板書した解答などを参考に、どのように記述していけば綺麗にまとまるかを習得していきましょう。
自力で解答を作ってみよう
解答例が分かったところで、自力で問題を1つ解いて、解答を作ってみましょう。
難易度は、問題を見れば解法がある程度浮かぶレベルのものがちょうどいいと思います。最初はなかなか難しいと思いますが、前節で挙げたポイントを押さえつつ書いてみましょう。
解答を作り終えたら、少し時間をおいてもう一度自分の解答を読んでみましょう。いろいろ拙いところに気づくと思いますので、都度修正してみてください。
なお、最終的には「解法がすぐに思い浮かぶこと」が理想形です。ですから、たとえば
- 解法を思い浮かべる(必要なら簡単にメモに書き起こす)
- 模範解答・解説を確認
- 模範解答・解説と方針が大きく違わなければ、詳細の計算はせず、すぐ次の問題へ
- 解法が思い浮かばなかった場合は、解説をよく読んで解法を理解
というように取り組んでみることをおすすめします。
質問者さんの年次にもよりますが、最初のうちは一問につきおおよそ15分~20分をかけ、自分の頭で解法を編み出そうと考える訓練を積んでおくことをおすすめします。
添削してもらおう
自分で修正するだけでは気づかないことも多いので、学校や塾の先生などに依頼して解答の添削をしてもらいましょう。
最初のうちは赤ペンでいろいろ直されると思いますが、添削者の修正箇所と、自分で見直して気づいた箇所とを見比べ、「次はどこに注意するか」を頭の中でまとめましょう。
数をこなそう
何事にも言えることですが、「良質転換」という言葉があるように、何かを上達させるためには「質」に加えて「量」も大切です。
「解答を作る→自分で見直しする→先生などに添削してもらう」というループを繰り返し、添削で分かった注意点を都度反映させていくことで徐々に記述が上手くなっていきます。
記述式の解答は、論理的思考力だけでなく、それを文章に落とす力(国語力の1つ)も必要です。
早いうちから根気よく鍛えていくことで、徐々に慣れていきます。
記述式で訓練される力は「数学・理科の試験で点数を取る能力」に留まらず、「自分の考えを論理的かつ簡潔に相手へ伝える能力」も鍛えられます。
これは社会においても非常に重要な力であり、ぜひ高校生のうちから鍛えていきましょう。
1. 記述式解答が採用される理由
さて、最後に一つ大事な問いを投げかけます。
そもそも大学側はなぜ「記述式解答」を採用しているのでしょうか?
ちゃんと「点数が取れる記述の勉強」をしたいのであれば、実はこの点が非常に重要になります。ここを理解せず「方法論」だけ確認しても、案外思ったような成長は見込めないのです。これは記述式解答に限らず全てにおいて言えることですが、「相手が何を求めているのか」を推察する力、目的に沿ったアウトプットをする力が勝敗を分けるため、よく覚えておいてくださいね。(「そんなのは分かってるけど、時間がない...!」という方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は無理をせず、目次2まで読んで勉強に移ってしまってOKです!)
さて、記述式解答は、特に難関大学の数学や理科の試験において採用されています。その主な理由は以下の2つです。
問題や教科知識に対する本質的な理解ができているかを評価するため
数学や理科において最も重要なことは、理論を正しく積み上げて結論にたどり着くことです。
マークシート方式などでは、まぐれで解答が当たってしまうこともあるため、理論を積み上げていく力を正しく評価するのが難しくなります。
一方、記述式であれば、どのような過程を経て結論にたどり着いたのかを解答用紙に書かなければならないため、本当に自分で考えて結論を出したのでなければそもそも解答を書けません。
これにより、理論を積み上げる力を正しく評価することができます。1点差で合否が分かれる受験の世界において、難関大学が採点効率を捨ててまで記述式を採用する理由がここにあります。
マーク式や結果のみを記入する方式に比べ、記述式の方が評価したい能力を正しく評価できるのです。
能力をより細かく段階分けして評価するため
記述式が採用される問題は、抽象度の高い難問が多く、結果に至るまでに多くの過程を踏む必要があります。
このような問題において結果のみを評価してしまうと、点数が両極化してしまいます。
そこで、プロセスも含めて評価する記述式を採用することで、たとえ最終的な結論を出せなかったとしても、その過程が論理的に正しければその分の点数を与えてくれます。
これにより、0か100かの両極端ではない、より細かく段階わけされた評価ができるようになります。面倒・難しいと思われがちな記述式ですが、この側面においては受験生の大きな味方です。
たった1つの計算ミスでそれまでの計算が全て無駄になってしまうよりは、ミス以外の部分において少しでも評価をしてもらえた方が嬉しいですよね。
以上を参考にしていただき、少しでも数学の記述勉強を前向きに進めていただければ幸いです。頑張ってくださいね。
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