よく「論理的な文章を書け」と言われますが、どういう文章が「論理的」で、どういう文章が「論理的でない」のか、いまいちわかりません。
東京学芸大学の受験で小論文が必要になりそうなので、実例などで説明してもらうことはできますか?
自分では「論理的だ」と思っていても、相手にはそうは思えないこともあります。
「論理的な文章」を書くには、自分がもっている背景知識や、ふだん考えていることなどを、自分は相手と共有できていないということをしっかりと自覚する必要があります。
1. 論理の飛躍は避けるべし
以前の記事で、下記のような小論文の解答例をもとに、「問題の意図に即した解答をすること」についてご説明しました。
(参考記事:「大学受験の小論文における最重要ポイントは?」)
今回は、それ以外の点について添削を加えていきたいと思います。ポイントとなるのは、「論理の飛躍」です。
まずは、問題と解答例を見てみましょう。
Q.日本では長らく少子高齢化が社会問題とされています。このまま少子高齢化が進むことによるメリット・デメリットについて、あなた自身のこれまでの学習を踏まえて、考えを述べてください。
A.
私は、少子高齢化に歯止めをかけるために、「子ども手当」の増額が必要だと考えています。
私が、このように考える理由は、実際に私の身近にも、経済的な事情から、子どもを持つことへのためらいを感じている人がいるためです。そういう人たちに、心配なく子どもを産める環境を用意することが、少子高齢化を止めるために一番必要なことだと考えます。
また、「子ども手当」の増額だけではなく、日本の多くの企業がいまだに採用している「年功序列」型の雇用も、変更していく必要があると考えます。
たとえば、ネットへの知識などは、高齢者よりも若者の方が多く持っており、デジタル化が進む現代社会では、若者の方がより成果を残していると考えられます。
したがって、「年功序列」を撤廃し、「実力主義」を取り入れれば、若者が成果に見合った報酬を受け取ることができるようになります。そうすれば、家計が潤い、安心して子どもを持つことができるようになります。
以上論じてきた通り、少子高齢化への対策としては、若者への経済的な優遇が不可欠です。それが実現することにより、少子高齢化の問題が解決するばかりか、日本の経済不振も大きく改善され、社会全体が好循環になっていくと考えます。
2. どういった点が「論理の飛躍」なのか
この解答例のなかで、特に次の箇所に着目してください。
たとえば、ネットへの知識などは、高齢者よりも若者の方が多く持っており、デジタル化が進む現代社会では、若者の方がより成果を残していると考えられます。
したがって、「年功序列」を撤廃し、「実力主義」を取り入れれば、若者が成果に見合った報酬を受け取ることができるようになります。
たしかに、パソコンやスマホの取り扱いについては、高齢者よりも若者の方が詳しいかもしれません。システムエンジニアのような職種に就いている人も、若者の方が多いのかもしれません。
しかし、単なる印象は情報としての価値をあまりもたないと考えるべきでしょう。その情報をどこから入手したのか、その出典を提示したいところです。
たとえば、「経済学者の○○が書いた『△△』という本によれば~」「厚生労働省の2019年の報告によれば」などです。
また、それが明らかになっても、まだ問題はあります。果たして「ネットの知識がある」=「仕事ができる」と簡単に決めつけてしまってもいいのでしょうか。
たしかに、システムエンジニアのような職種であればそうなのかもしれません。しかし、それ以外の業種では、新しいプロジェクトを始める際の企画力、他社とのやりとりをする営業力、利益を生み出すためのビジネス設計をする経営知識など、他にもさまざまな要素が「成果」と結びついているのではないでしょうか。
としたときに、ベテランが持っている知識や経験というものも、少なからず成果に結びつくものだと考えることができます。逆に、それが乏しい若手は、そうした面において苦労し、なかなか(ネットの)専門知識を生かすことができないかもしれません。その点の考察や言及が書けていると、論理としては「不十分」だと判断されてしまいかねません。
また、最後の結論部分である次の表現も、同じく論理の飛躍があると言えるでしょう。
それ〔若者への経済的な優遇政策〕が実現することにより、少子高齢化の問題が解決するばかりか、日本の経済不振も大きく改善され、社会全体が好循環になっていくと考えます。
たしかに、若者が十分な給料をもらえるようになり、若者の消費活動が活発になれば、経済の回りはよくなるかもしれません。が、いくらなんでも、若者の経済事情が改善されることが、日本社会全体が抱える問題をすべて解決してくれるなどというのは、理想論が過ぎるでしょう。
何でもかんでも、明るい話に持っていけばいいというものではありません。むしろ、分をわきまえた、現実的な意見やアイデアこそが、学問の世界においては評価されるのです。
3. まとめ
今回のポイントをまとめると、
- 誰が読んでも納得できる論理になっていることが重要
- 情報源をできるだけ詳細に記載することが重要
この2点に集約されるでしょう。
数学の問題解説を読んでいて、いきなり式の形が大きく変わる式変形がなされていると、ついて行くのが大変だったはずです。それと同じように、小論文の論理展開も、読む側が無理なくついてこられるように、配慮してあげる必要があります。
一方で、いくら論理展開が正しくても、そもそも前提が間違っていたのでは、話になりません。したがって、ちゃんとした情報源を参照しているということを、アピールする必要があるのです。
是非この2点を意識して、小論文の問題に取り組んでみてください。
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