高校1年生です。
文系なのですが、将来どの学部が向いているのかわからなくて決められていません。
大学のホームページを読んでも長過ぎてよくわからないのですが、それぞれの学部でどのようなことを学べるのか教えてください。
文系大学にはどのような学部があって、どのような勉強をしているのか知りたい、ということですね。
文系の学問は大きく分けて「人文科学系統」と「社会科学系統」に分けられます。
人文科学系統では思想や心理、文化や歴史などが対象となります。社会科学系統では社会の成り立ちを知り、社会のあらゆる要素を分析していきます。
文系その①人文科学系統は何を学ぶ?
この系統は幅広い分野を含んでいて、大抵の場合は様々な学科に分かれています。
「文学」はもちろん、「哲学」「歴史」「心理」「社会」などがあります。
文系科目の中に好きな科目がある高校生は人文学系を選択すればその科目の勉強に没頭することができます。
1.1 哲学は何を学ぶ?
哲学はこの世の成り立ちを問う学問です。「人間とは何か」「真実とは何か」「正義とは何か」「美しさとは何か」のような、抽象的な問いに思考を巡らせます。「そもそも」を問うことが好きな人や、日常的に「なぜ」という疑問を多く感じる人にとっては、楽しい学問領域だと言えるでしょう。ただ、それが仕事につながるかというと難しいところです。
1.2 心理学は何を学ぶ?
「心理」は近年とても人気で人の行動の背景を知れる面白い学問ですが、注意しておきたいのは実験が多いですし統計がとても重要なので意外と理系チックな部分があるということです。
また、「公認心理師」という新たな国家資格ができたことから、活躍の場が広がりつつあります。(それまでは大学院まで進んで試験に合格することで「臨床心理士」という民間資格が取れ、カウンセラーとして採用されるためには臨床心理士資格が必須でした。)
人の心のメカニズムを統計的に分析したい人は、心理学の道に進むといいでしょう。
1.3 社会学は何を学ぶ?
人は一人では生きていくことができません。必ず何かしらの形で他者と関わる必要があります(家に引きこもるにしても、電気・ガス・水道、食べ物、スマホやテレビなどは使うでしょうし、それは誰かの仕事によって作り出されています)。
では、その人間たちの集団(=社会)はどのような機能を持っているのでしょうか。単純に人間たちが寄せ集まったものが社会なのでしょうか。どうやらそうではなさそうです。人間が集うことによって、家族や村、國などといった単位が生まれ、その集団(共同体と言います)は独自のメカニズムで機能し、その集団のメンバーにさまざまな影響を及ぼします。
一言で言えば、心理学よりも大きな規模で、人間の集団を考察しようとするのが社会学という学問分野なのです。
また、最近だと漫画やアイドルのようなサブカルチャーの研究も盛んです。
1.4 文化人類学は何を学ぶ?
文化人類学はフィールドワークを元に、ある文化の様子を描き出す学問分野です。多くの場合、まだよく知られていない文化(東南アジアの島や、アフリカの奥地にある集落など)に実際に足を運び、数ヶ月~数年間の現地調査を行い、その報告をまとめることになります(学部では大がかりなフィールドワークはせず、文献調査がメインの場合も多いです)。
文化人類学を学ぶメリットは、自身の文化を相対化できるということです。私たちはどうしても、自分の国や文化を優れていると思いがちですし、西洋(ヨーロッパやアメリカ)を「先進国」だと捉えがちです。
しかし、いわゆる「発展途上国」の文化を詳しく見てみると、実は「先進国」に負けず劣らずの文化があったり、合理的な生活様式があったりします。むしろ、現地の生活においては、現代のテクノロジーや先進国の文化・思考法が適さないこともあるのです。
そうした文化の違いに触れながら、世界中のそれぞれの文化に共通する点・異なっている点を見つけ出し、より「人間」や「社会」に対する理解を深めようとするのが文化人類学の研究なのです。
1.5 文学は何を学ぶ?
文学に関しては多くの説明は不要でしょう。小説や詩、エッセイなどを主な対象として、そこから自由な解釈を導き出すのが文学研究の醍醐味です。
多くの場合、「日本文学」や「フランス文学」のように、ある言語とセットで学ぶことになります。そのため、語学が得意な人は自身の強みを発揮することができます。
1.6 歴史学は何を学ぶ?
歴史学はよく文学部の中の一つの学科として位置づけられます。古い文献を頼りにある文化の歴史をたどり、それをできるだけ客観的に記述することが目的です。
史学科で歴史を学ぶ場合、多くは時代や対象となる地域を限定した研究になります。「明治時代の国語教育」「台湾の労働環境史」などです。
また、参照する文献は古文書であったり、方言や(対象が海外なら)外国語の文献だったりします。そのため、そうした文章を読めるだけの語学力も求められることになります。
1.7 芸術は何を学ぶ?
意外に思われるかもしれませんが、芸術も文学部の領域です。美大では自分自身が表現者となること(実践)が重視されますが、人文系学部で芸術を学ぶ場合は、批評や歴史調査を行うことになります。
絵画批評や音楽批評などがしたい人、自分で描いたり演奏するのではなく、鑑賞者の視点で芸術を論じたい人は、この路線を検討してみてください。
1.8 人文科学系統 小括
「人文学系は就職できない」という偏見を耳にしますがそんなことはありません。
確かに法学部や経済学部のように大学で学んだ知識を就職先で活かすのは難しいかもしれませんが、企業が採用の際に見るのは学部ではなくその人自身です。
どこの企業にも人文学系の出身者はたくさんいます。
文系その②社会科学系統は何を学ぶ?
続いて、社会科学系統の説明に移ります。法学部や政治学部、経済学部などがこの系統に入ります。
2.1 法学系は何を学ぶ?
法学部では名前の通り社会のルールである法・法律を学んでいきます。
具体的な学習内容は学科によりますが、法律を解釈したり実例を学んだりします。
法学部に入る人のうちの一部は超難関である司法試験を受けて法曹(裁判官・検察官・弁護士)を目指しますが、そのほかの人の進路は多様です。
国家公務員や地方公務員といった安定した職業を狙って法学部に入る人も多いです。
そのほか、法律の知識はどの企業でも必要とされているので、マスコミや証券会社、保険会社、金融といった多様な民間企業に就職先があります。
2.2 政治系は何を学ぶ?
政治学では、選挙や公共政策などの政治の仕組みについて学びます。
実際に国会で動いている政治だけでなく、その背景にある社会の状況を理解することが目的です。
また、国同士の関係性を論じる国際政治学もあります。ウクライナやイスラエルの政治情勢が多く報道される中で、国際問題の解決に向けて関心と期待が高まりつつある分野です。
2.3 経済・経営・商学系は何を学ぶ?
経済学は景気の変動とそれに対する政府の対策などお金の大きな流れを学ぶマクロ経済や個人の生産活動・消費活動を学ぶミクロ経済、そのほかにも国の間のお金の流れを学ぶ国際経済学などがあります。
多くの場合は数学(特に理系が高校で学ぶ数学Ⅲの分野)を使うので、数学に苦手意識のある人には厳しいかもしれません。
経営学部では会社運営の方法(経営・生産の管理や法務)を主に学び、商学部ではコストを管理する会計やマーケティングなどビジネスパーソンに必要な実務的なことを主に学びます。
2.4 社会科学系統 小括
これらの学部はビジネスに直結しているので就職に強いと言えるでしょう。多様な企業からの需要があります。
また、国家資格を取得すれば、将来安定して高収入を望めるでしょう。
文系その③教育系は何を学ぶ?
教育学部では心理学・社会学などとても幅広い分野を学びながら教育のあり方を学んで行きます。
教育学部というと先生になる、というイメージが強いと思いますがそうではありません。
教員になるために必要な単位を取得すればもちろん教員になることもできますが(実は中高の教員免許であれば他の学部でも必要な単位を取得すれば教員になれます)、特に有名大学であれば教員にならずに一般就職する人も多いです。
教育学部で学んだ、人間に対する多面的な理解やマネジメント術を生かして企業の人事や営業に携わることが可能です。
文系その④教養系は何を学ぶ?
ICUや国際教養大学、早稲田や上智の国際教養学部が有名ですね。
これらの学部では英語でリベラルアーツを学ぶ事が多いです。
リベラルアーツというのは、「狭いが深い」専門教育と違い、幅広く教養を身につけて学問領域を横断して活躍するための総合力を身につける教育です。
授業は英語で行われる事が多いため実践的な英語力が身につき、帰国子女や留学生など多様なバックグラウンドを持つ学生がいることも特徴です。
学んだことを生かして様々な国の人たちと交流する外交官や商社に就職するほか、幅広い知識や英語力を生かしてマスコミや外資系など幅広い分野に就職する事ができます。
いかがでしたか?大学進学後も含めた将来をイメージして、受験へのモチベーションを高めてくださいね!
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