英語が得意なので、英語が活かせる大学を探していて、ICU(国際基督教大学)を受験しようと思い始めました。
ICUには教養学部しかないと聞いたのですが、具体的にどのような勉強をするのでしょうか?
専攻などのシステムはありますか?また、大学に入ってからはどの程度の英語のレベルが求められるのでしょうか?
英語が活かせる大学を探していて国際基督教大学(以下ICU)を検討し始めたとのこと。
確かに「英語を活かせる大学」という意味ではとてもいい環境だと思います。
そこで、ICUについてより知っていただけるように、キャンパスの雰囲気や学べること、学科について少し詳しくお伝えできればと思います。
1.国際基督教大学(ICU)について
ICUについてまずは簡単にご紹介します。
ICUの日本語での正式名称は「国際基督教大学」、英語では"International Christian University"です。
東京は三鷹にある私立大学で、若干駅から不便なところにあるのが玉に瑕ですが、そのぶん広大なキャンパスを誇るのがICUの特徴です。
「バカ山」「アホ山」と言われるちょっと変わった名前の芝生の丘が本館の前にあり、昼休みなどはバカ山で太陽のもと昼寝をしている人、ランチを食べている人など様々です。
中には授業でバカ山に出て円になってディスカッションするクラスもあるようです。
一旦キャンパスにはいれば、緑に囲まれた、まるでアメリカの大学をそのまま日本に持って来たようなキャンパスが広がります。
また名前に「国際」が入っているだけに非常に国際色豊かで、多様性に富んだ大学でもあります。
アメリカや中国をはじめとするたくさんの国から来た多くの留学生が在籍しており、キャンパス内の寮に住んでいます。
また帰国子女も大変多く、教室で、食堂で、図書館で、寮で、そのほか至る所で英語が飛び交っています。
外国人教員比率も高く、ICUにいる限りはどこかで英語が話されているのを聞くことになるでしょう。
同じく「基督教(基督教と書いてキリスト教です)」の文字も入っていますが、そもそも在学生に占めるキリスト教徒の割合はそれほど多くはなく、礼拝に参加する必要なども一切ありません。
強いて言えば、必修授業で「キリスト教概論」という科目があるくらいで、これもキリスト教を信仰することを求めるような授業では全くありませんので安心してくださいね。
一方で「キリスト教関連の行事」は多く、礼拝のほか、C-weekと呼ばれるキリスト教週間には授業が少し短くなり、昼休みにキリスト教関連のセミナーや行事が開かれたりします。
またクリスマスごろの燭火礼拝(キャンドルサービス)はとても厳かでかつ綺麗なものです。
他にもICU協会の中にはパイプオルガンがあり、希望者にはパイプオルガン講座なども開催しているようです。
2.ICUの教育~教養学部アーツ・サイエンス学科とは~
ICUを志望校として考え出した方々の多くに「ICUにはどんな学部があるの?」とよく質問をもらいます。
まず、ICUはアメリカのリベラルアーツカレッジのように「単科大学(college)」です。本学に存在する学部・学科は、「教養学部-アーツ・サイエンス学科」のみです。
多くの大学では、入学時点(というか受験時点)で「経済学部」「法学部」「工学部」など、具体的な学部を選択し、入学後は選んだ学問に準じたカリキュラムを履修していきます。
一方本学では、大学1年次は文系・理系問わず幅広く学問に触れ、「リベラルアーツ」として学際的に学んでいきます。
その後2年次より、「メジャー(=専攻)」を選び、自身の希望に準じて学問を追究していく、という流れになります。
したがって、入試の時点では文系・理系で入試問題に違いはあるものの、入学してしまえば皆おなじ学部・学科というわけです。
この制度のいいところは、文理を問わず、色々な学問分野を横断して、誰でも自分の学びたいことを幅広く学べる点です。
文転はもちろん、理転する人も少なからずいますし、文系の人が理転するための準備ができるような授業(数学や物理、化学、生物など)も用意されており、高校の範囲まで遡って履修することができます。
ですから、たとえば
- 学校では先生に言われて文系にしたけれどやはり自分は生物学に挑戦したい
- とりあえず数学が得意だから理系にしたけれど本当は政治に興味がある
などの思いがある人にとっては、転学部をする必要もなく、かつ4年で卒業することができるため、大きなメリットと言えます。
もちろん先にお伝えした通り、在学中にもメジャー(=専攻)を決めるまでは興味のある分野の授業をいろいろとってみるということもできます。
また英語以外の言語にも興味がある場合は、ICUに用意されている様々な言語の授業を(ほかの多くの大学と異なり必修ではないのですが)履修できますし、近隣にある東京外国語大学との「単位互換制度」を利用し、マイナー言語を履修することまで可能です。
「制度」「慣例」に縛られることなく、学生の思いや可能性を出来る限り広げていきたい、という意思が強く表れている証拠と言えるでしょう。
ちなみにICU自体は「教養学部」であるため、特に理系の場合は(分野にもよりますが)専門性を追求するには向いていないかもしれません。
ただこれも近接する東京農工大学との「単位互換制度」を利用すればカバーできますし、理系の学生数がそもそも少ない分、教員とより近くでコミュニケーションをとれるという点ではむしろメリットといえるかもしれません。
もちろん教授陣は文理を問わず世界をまたにかける教授が在籍しているため心配はいりません。
また、卒業後の進路として「進学」が多いのもICUの特徴です。
理系は言わずもがな、文系でも大学院に進学する学生の割合は、他の私立文系の大学と比べても高めです。
なお、上述の通りICUは専門性というよりは学生の教育を重視する部分が大きいので、進学先の大学院は意外にもICUの大学院よりも東大の大学院のほうが多いです。
ICUの授業はどうなっている?
ICUの授業についてみてみると、まず一年次に全員必修でEnglish for Liberal Arts(ELA)という授業を履修(ただし日本語が母語でない学生の場合、JLPという日本語学習プログラムを履修)します。
詳細は後述しますが、一年次はこれがメインになってきます。
次に英語以外の授業についても見てみましょう。
ICUでは二年次の秋頃に「メジャー(=専攻)」を決めるのですが、そのメジャーを選択するための「要件」なるものがあり、1・2年次はこれを元に授業をとっていきつつ、ジェネ(General Educationの略、いわゆる一般教養)やファンデ(Foundation、基礎科目)を履修していきます。
ですから、幅広い学問に触れながら、大まかに「来年、自分はどんなメジャーに進もうか?」と考えながら、授業を取っていくわけです。
ちなみにICUにおいて、全学共通の必修科目は、「ELA」とジェネの「キリスト教概論」、それから実技の「PE Exercise Exercise、Health Science」のみです。
他大学ではもっと多くの必修科目が用意されている事が多く、この点からも「リベラルアーツの重要性」を強く意識しているからこそのカリキュラムと言えるでしょう。
さて、本題に戻ります。
2年次のメジャー選択後は、それぞれのメジャーに用意された「エリアメジャー」と呼ばれる必修科目の履修に加え、一定数の「エレクティブ」と呼ばれる選択科目の履修をしていくことになります。
なお、本学では「メジャー(=専攻)」以外にも「マイナー(=副専攻)」など、複数の学問を学ぶことも可能で、「ダブルメジャー(=2つの専攻)」、「メジャーマイナー(専攻と副専攻)」、「シングルメジャー(専攻一本)」など、パターンも様々存在します。
このパターンによっても、必修科目と選択科目の比率は変わってきます。
上記以外には、E開講(=英語開講)科目を、指定単位数以上履修しなければならない他、四年次には卒業論文の執筆が求められます。
以上のような制限はあるものの、基本的には取りたい科目を単位取得制限の範囲内で取りたいように自分でアレンジして取ることができます。
そのぶんしっかりと計画的に履修をしていかないといけないという点も意識しておきましょう。
最後には卒業論文が待っているわけですから、「いつかきっとやりたいことが見つかるだろうし、今はまだ考えなくていいや」と、「考えること」を先延ばしにするのではなく、1年次から幅広い学問に触れていく中で未来を描いていきましょう。「自分だからこそ学ぶ・深める意味があふれている」と思える専門分野を作り上げる意識で、ICUでの学びにのめり込めると良いですね。
なお、履修に関する相談も、Academic Plannning Centerという窓口や、ICU Brothers and Sistersという団体に所属する学生による履修相談もできるほか、「アドバイザー」と呼ばれる自分の担当の先生と、各学期の履修登録日に必ず面談し履修の許可をもらわないといけないという制度もあるので、「自分は何を履修するべきか」などの相談は非常にしやすい環境にあります。一人で悩む必要はないので安心してくださいね。
3.ICUで勉強できること~専攻(メジャー)~
次に、ICUで具体的にどのような専門分野を学べるのかを見ていきましょう。
先述の通り、ICUには学部がない代わりに二年次の終わりに専攻(メジャー)を決めます。
ICUでは現在31のメジャーから決めることが出来ます。
美術・文化財研究 | 音楽 | 文学 |
哲学・宗教学 | 経済学 | 経営学 |
歴史学 | 法学 | 公共政策 |
政治学 | 国際関係学 | 社会学 |
人類学 | メディア・コミュニケーション・文化(MCC) | 生物学 |
物理学 | 化学 | 数学 |
情報科学 | 言語教育 | 教育学 |
言語学 | 心理学 | アメリカ研究 |
アジア研究 | 開発研究 | 環境研究 |
ジェンダー・セクシャリティ研究 | グローバル研究 | 日本研究 |
平和研究 |
(※一覧はICUのホームページから確認できます https://www.icu.ac.jp/academics/undergraduate/major/ )
メジャーの決め方にも3パターンあり、
- ダブルメジャー
- メジャー・マイナー
- シングルメジャー
があります。
ダブルメジャーの場合は、二つの専攻を中心的に勉強します。
卒論を書く方と書かない方は便宜的に決めますが、二つの専攻のどちらにも時間をかけてしっかりと勉強することができます。
一方でいろいろなことを幅広く学ぶほどの余裕はないかもしれません。
メジャー・マイナーの場合は、一つの専攻科目と副専攻科目を選びます。
専攻科目ほどの単位数を要しないので、一つの専攻に注力しつつ、他の専攻もやってみたいという場合に良いかと思います。
シングルメジャーの場合は、一つの専攻科目だけを決めます。
一つの専攻にかける時間が増える他、他に興味のある科目をエレクティブとしてたくさん取ることができるので、幅広い学問を学際的に学びたいという人にも向いているかもしれません。
ちなみに、基本的にメジャー要件を満たしていれば、選抜試験などは無く誰でもそのメジャーを選択することができます(東大のような進振りはありません)。
また、例えば物理学と経済学のダブルメジャーなんてこともできます。
自分の学びたいことに向けてうまく履修を設計していける人には、とても素晴らしい制度でしょう。
もちろん、最初は自分だけではうまく設計できなくても、履修計画をサポートしてくれるシステムが充実していることもICUのいいところです。
4.ICUで英語力を磨く
ICUに入るとまず1年目はEnglish for Liberal Arts(ELA)という授業があります。
入学式前のTOEFL ITPのスコアによって「Stream 1〜 Stream 4」まで分けられ、それぞれの英語力にあったレベルの授業を受けることになり、1年次はこれが必修です。
「Stream 1」が一番上で、一番下が「Stream 4」となっており、「Stream 3」がもっとも学生数が多く、「Stream 1と2」は帰国子女の中でも特に英語の得意な人たち、ないしはものすごく英語のできる人という印象で、実際のところあまり学生数も多くありません。
また、「Stream 3」といっても幅は広く、話すのが苦手な人から英語圏に留学していて英検1級やIELTS 7.0以上持ってる人まで様々です。
「Stream 1や2」では一年時の秋学期(ICUは3学期制なので春・秋・冬学期があります)で授業が終了し、冬学期には「Research Writing」という英語で論文を書くクラスを受講して終了、週あたりの授業数も少なくなります。
「Stream 3や4」では、週4日で一日に2〜3コマくらいの頻度で授業が行われます。全て同じセクション(20人くらいのクラス、セクションが同じ人のことをセクメ=sectionmateと呼ぶ)の友人たちと受けられるため、まるで高校の延長のような感覚になります。
また「Stream 3や4」になると一年時は取得単位数のうちのほとんどが「ELA」の授業で占められることになり、二年次に「Research Writing」を履修しなければなりません。
ちなみにこのELA、もちろん授業は全て英語で行われます。
先ほど申し上げた通り、ELAという授業が一年次にあるので、特に「Stream 3と4」の学生はかなり英語漬けの日々になります。
このELAに本気で向き合えば、少なくともある程度「英語力(Academic English)」ができるようにはなります。あくまでICUが求めているのは「学術的な英語を使えるようになること」ですから、入学時の英語力が仮に低くても、ELAの予習復習をしっかりすれば一年後にはある程度英語はできるようにはなります。
ただし、このELAというのがなかなかに厄介で、特に英語に慣れないまま高校を卒業した人にとっては、触れる英語の量がとにかく多くかつハードな内容の英文を読まなくてはならないため、最初は付いて行くのがやっとという状態になる人も多いので、「入学1年目から英語は大変になるから頑張ろう...!」と、の心づもりをしておけると良いですね。
なお、ちらほら登場している「英語力(Academic English)というのは、日常会話的に使われる英会話やTextingではなく、あくまで論文を読み書きしたり、プレゼンをしたりといった能力のことです。
ELAの授業も、多くの学術的な英語を読み、それに関連した題材でessayを書いたり、プレゼンをしたりします。
あくまで「Academic English」の授業ですから、やはりどうやって英文を読むか、書くかにやはり重点が置かれており、どのような論理構造で英文が書かれているのか、書けば良いのか、またその背景にはどのような知識が必要かまで言及します。
特に英語に慣れていない一年生にとってみればかなり大変な授業がELAですが、これに真剣に向き合い、乗り越えることが、その後英語を使って授業を受けたりする上で自信になるでしょう。
5.おわりに
ICUは少し変わった大学ではありますが、やはり「英語を活かせる大学」という意味では他の大学の追随を許さない良質な環境であると言えるでしょう。
また他大学の似たような学部との大きな違いの一つは「全部の授業を英語で取る必要はない」ということです。
国際教養大学(AIU)や早稲田大学 国際教養学部との最大の違いはここにあります。もちろん英語で学んだ方がやりやすい学問もあるでしょうが(分野によっては文献が英語だらけという場合もしばしばです)、特に初学者にとっては知らないことを母語でない言語で一から学ぶというのはなかなか大変な作業です。
ICUなら英語開講の授業をとりつつ、日本語で学ぶこともできます(例えば国際関係学などは英語の方が向いていますが、何も日本文学を日本人から学ぶのに英語を使う必要もないということです)。
卒論も日本語、英語、どちらで書いても大丈夫です。
ICUは帰国子女や留学生も多いので"Bilingualism"を謳っており、英語だけ、日本語だけで卒業できないようにしています。
もちろん徹底して英語を学び、英語で学ぶ環境は整っているので、英語を生かしたいという人にも最適な大学の一つです。
また学際的(Interdesciplinary)に学べる大学という点で、慶應義塾大学のSFCと比べられることがありますが、ICUの場合はあくまで教養学部なので専門性はそこまで追及できないとも言えます。ICUは「英語をしっかり学べることと幅広くいろいろな学問にふれることができる」のが特徴、SFCは「学際的な学問(例えばICUのメジャーで言うとGlobal Studiesなどはそのひとつです)を最初から深く取り組めるのが特徴」とすみ分けて理解しておくと良いでしょう。
ぜひ本記事を参考に、一度オープンキャンパスなどで雰囲気を感じ取って実際に確かめてみてください。
モチベーションアカデミアは、GMARCHをはじめとする「難関私大対策」にこだわる塾です。
対話型授業」で無暗な丸暗記を避けることで、「本質的な知識」を的確に押さえ、解答を導く思考力を養い、教わったことを「自分で使いこなす」という勉強の仕方を学びます。
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